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【日経新聞】冷房の電力消費 太陽光発電あれば「心配無用」

夏に備える家づくり

 日本では2011年の東日本大震災後の電力需給逼迫のなかで、住宅でもオフィスでもみんなが熱心に節電行動に取り組んだ。そのかいあって、夏の昼間における消費電力のピークは劇的に減少している。

■震災前より2割減

 図1は東京電力管内における、夏の各日における最高気温とピーク電力の相関を示している。当然ながら、最高気温が高いほど冷房の消費電力が増加する。震災前の2010年には6000万kWに達する日もあったのが、震災後には5000万kW を超えなくなっており、実に2割も電力ピークが低減したことを示している。

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図1 東日本大震災直後は節電行動でしのぎ、その後に省エネ冷房機器への更新が進んだため、夏場の電力ピークは20%も減少したまま安定。震災後の努力は決して無駄ではなかった(資料:東京電力)

 既に震災から年数がたち、直後のように極端な節電行動は少なくなった。一方で、高効率な冷房や照明への買い替えが進んだため、使い方が元に戻ってもピークは低いままにとどまっている。

 節電行動というソフトパワーと省エネ機器への更新というハード対策のコンビネーションは、確実に成果を出している。みんながその気になれば、冷房を含めた電力のピーク削減は十分に可能なことが証明されたのだ。

 さらに震災後の太陽光発電(PV)の急速な普及が、電力供給の形態を変えつつある。図2 に、東京電力における一番暑い日の、震災前と後の電力構成の時刻変化を示した。

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図2  東日本大震災前(上)は原子力がベースを分担し、制御性のよい(ただしコストは高い)石油火力や揚水発電が昼間の大きなピークを分担していた。震災後(下)は昼間のピークが大きく減少し、かつ太陽光発電の発電量が増加したために、原子力が停止している中でも余裕をもって電力需要に対応できている(資料:東京電力)

 震災前の2010 年には原子力が終日ベース(年間を通じて一定量を安定的に供給する電源)を担当し、昼間の高いピークを石油火力や揚水発電がカバーしていた。震災後の2015年を見ると、なにより昼間のピークが急激に低くなっていることが目につく。

さらに、日中には普及した太陽光発電がそれなりの電力を供給できるようになった。そのため原子力が停止しているなか、石油火力などをあまり動かさずとも余裕をもって昼間のピークを処理できるようになってきた。

 太陽光発電の普及が進む中国・四国・九州では全体の10%を超える電力を太陽光発電が生み出しており、その他の地域でも無視できない部分を分担しつつある(2015年の調査)。

 太陽の恵みで発電する太陽光発電は、日射量が多すぎて必要になる冷房とはベストな組み合わせだ。この「ベストカップル」の威力は、既に実際の電力需給を変化させつつある。節電行動と高効率冷房、そこに太陽光発電が組み合わさることで、既に冷房は恐るるに足らない時代を迎えつつあるのだ。

■問題はむしろ「夕方」

 もし自分の家の屋根に太陽光発電装置が既に載っかっているのなら、なおのこと安心してエアコン冷房を使うことができる。冷房以外のエネルギー消費用途である照明や暖房・給湯は、夜や冬に「太陽の光や熱が不足する」からこそ必要になる。

 残念ながら、そうした肝心の時間帯には太陽の力も衰え、太陽光発電 の発電量がダウンしてしまうので、結局は発電所からの電気に頼らざるを得ないことになる。

 一方で冷房は、「太陽光があり余っている」夏の昼にこそ必要になる。太陽エネルギーが満ちあふれているのだから、太陽光発電も元気一杯。あふれ出てくる発電量の一部を、遠慮なくエアコンに使えばよい。

 むしろ、問題になる時間帯は、太陽光発電がダウンし、照明・家電にスイッチが入る「夕方」であることを覚えておこう。

前真之(まえ・まさゆき) 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻准教授。博士(工学)。1975年生まれ。1998年東京大学工学部建築学科卒業。2003年東京大学大学院博士課程修了、2004年建築研究所などを経て、2004年10月、東京大学大学院工学系研究科客員助教授に就任。2008年から現職。空調・通風・給湯・自然光利用など幅広く研究テーマとし、真のエコハウスの姿を追い求めている。

(書籍『エコハウスのウソ[増補改訂版]』の記事を再構成)

[参考]「エコハウス」と聞いて思い浮かべる住宅のデザインや暮らし方の多くが、真の省エネにはつながっていない。東京大学で省エネ住宅を研究する気鋭の研究者が、実証データやシミュレーション結果をもとに、一般ユーザーや住宅関係者が信じて疑わない"エコハウスの誤解"をバサバサと切っていく。初版発行後に明らかになった新たな知見や、2020年の「省エネ基準義務化」などについて大幅に加筆した。

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